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被災地  ― 被災地に音楽を ―

復興から発信する力へ

松本克巳(元ヴァイオリン奏者)

被災地に音楽を

災害で傷ついた土地へ演奏家が赴き、演奏を通して心を癒し、交流を深めます。

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Ⓒ山口敦

東北の夢プロジェクト

「被災地に音楽を」から発展し、東北から文化芸術を発信し、子供たちの笑顔を応援します。

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東日本大震災から12年

被災地の未来のために何ができるか

 2011年3月の東日本大震災から12年の歳月が過ぎました。未曾有の災害の中から立ち上がり、地域の復興に邁進されているみなさまに、心からの敬意とエールをお送りします。これからも日本フィルはオーケストラに何ができるかを自らに問い続け、被災地の未来のために取り組みたいと考えています。

 震災直後に日本フィルが開始した「被災地に音楽を」では、「被災地の力になりたい」という人々の気持ちを音楽に託し、被災地に届けてきました。そこで未曽有の災害のあまりにも過酷な現実を目の当たりにした私たちは、この問題に長期的に取り組むことを心に決め、これまで12年間で326回にわたって被災地に音楽を届けてまいりました。震災から数年が経過した時期には、被災地での生活が仮設住宅から災害公営住宅へと移ることで生じた課題への取り組みとして、新しい地域コミュニティづくりと、子どもたちとの活動を実施しました。また、2017年には「芸術文化に触れたい」「他地域と交流したい」「被災地の情報発信をしたい」という新たなニーズが明らかとなり、そのために何ができるかを考えながら活動を行ってきました。

 2019年には、被災地のさらなる復興を後押しするため、「子どもたちの笑顔と未来を応援する」、「沿岸と内陸部の交流機会を創る」、「地域の持つ文化を紹介する」、「孤立する高齢者に社会参加のきっかけを作る」をテーマに「東北の夢プロジェクト」を開始しました。沿岸部で郷土芸能や吹奏楽、学校での文化活動に励む子供たちを内陸部に招き、オーケストラと共に舞台を作り上げることがこのプロジェクトの核です。2020年度はコロナ禍により中止となりましたが、2021年度には岩手県で2度目の「東北の夢プロジェクト」を開催、2022年度には岩手県、福島県での実施が実現しました。福島県では震災後に南相馬市小高区で生まれた合唱曲「群青」を合唱とオーケストラが共演し、大きな感動が広がりました。2023年度以降も各地の自治体や地域コミュニティとの連携をさらに深めながら、このプロジェクトを実施していきます。そして沿岸の被災地訪問についても、各地の地域課題を見つめながら息の長い取り組みを続けてまいります。

2022年7月にはこれまでの活動への評価から第16回後藤新平賞という東北地方にゆかりある素晴らしい賞を頂きました。12年が経過し、震災の記憶が薄まりつつある今だからこそ、より多くの方と力を合わせて東北地方の復興を後押しし、各地の現状を広く伝えていくことが私たちの使命だと考えています。そのために、これからも現地の人々の心や状況に耳を傾け、自らにできることを考え、行動していきます。これからも皆様のご理解とご協力を、心よりお願い申し上げます。

2023年3月11日

日本フィルハーモニー交響楽団