シンガポール生まれのカーチュン・ウォンは、舞台におけるその圧倒的な存在感と東西の音楽的遺産を探求し続ける思慮深さにおいて国際的に高い評価を得ている。2023年より日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者、そして2024年秋にサー・マーク・エルダーの後任として英国の名門オーケストラ、ハレ管弦楽団の首席指揮者兼芸術顧問に就任。2025年夏、英国タイムズ紙が「最高となる五つ星を超えた六つ星に値する」と絶賛したハレ管弦楽団とマーラー交響曲第2番《復活》でのBBCプロムスへの鮮烈なデビューは記憶に新しい。
2016年マーラー国際指揮者コンクールでの優勝以来、ウォンはクリーヴランド管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、BBC交響楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団など、世界有数のオーケストラに登場してきた。2025/2026年シーズンには、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、シアトル交響楽団、中国国家大劇院管弦楽団、香港管弦楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、シンガポール交響楽団に再登場するほか、フランクフルト放送交響楽団、サンディエゴ交響楽団、ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団、メルボルン交響楽団、サンパウロ州立交響楽団(OSESP)にデビューする。さらに、ハレ管弦楽団とともに大規模な中国ツアーを行い、その掉尾を飾る形で、日本フィルハーモニー交響楽団の創立70周年を記念するサントリーホールでのマーラー交響曲第8番の公演が予定されている。 現代作曲家と異文化対話の積極的な推進者でもあるウォンはニューヨーク・フィルハーモニックとタン・ドゥン《火の儀式》、BBC交響楽団と細川俊夫《祈る人》、シアトル交響楽団と共にリーナ・エスマイル《ヒンドゥスタンヴァイオリンの為の協奏曲》の世界初演を指揮。ドレスデン・フィル首席客演指揮者時代にはナロン・プランチャルーン《影の反映》を委嘱。ニュルンベルク交響楽団首席指揮者としての最終公演ではムソルグスキー《展覧会の絵》を五種類の中国民族楽器とオーケストラのためウォン自身が再構築し「クラシック・オープン・エア音楽祭」で75,000人の聴衆の前にて披露された演奏はドイツ語圏公共放送チャンネルおよびバイエルン放送を通じて国際的に放送された。ハレ管弦楽団との就任二期目では、マックス・リヒターとアンナ・ラップウッドとの共同委嘱作品や、ウンスク・チンによる改訂版《星たちの子供の歌》の世界初演が予定されている。 ハレ管弦楽団の任期初年度にリリースされたブリテン《パゴダの王子》およびブルックナー交響曲第9番の録音は、英国グラモフォン誌(2025年6月号)において「すべてのブルックナー愛好家必聴」と高く評価された。同楽団とマーラー交響曲第2番《復活》も予定されている。 これまでにネルソン・フレイレ、トーマス・ハンプソン、バーバラ・ハンニガン、ゲルハルト・オピッツ、クリスティアン・テツラフ、ゴーティエ・カプソン、ダニエル・ロザコヴィチ、藤田真央、セルゲイ・ナカリャコフ、ヴィルデ・フラングといった著名なソリストたちと共演している。 2019年12月には、シンガポール人芸術家として初めてドイツ連邦共和国功労勲章を受章し、シンガポールとドイツの文化交流の促進およびドイツ音楽を世界に広めた功績が称えられた。
東京藝術大学作曲科および指揮科を卒業。第1回ブダペスト国際指揮者コンクールでの鮮烈な優勝を飾ったのを皮切りに、世界的に活躍の場を拡げ、現在も国内外の第一線で活躍を続けている。特に、ハンガリーでの活躍は目覚ましく、その功績に対してハンガリー政府よりリスト記念勲章、ハンガリー文化勲章、民間人最高位となる星付中十字勲章、ならびにハンガリー文化大使の称号が授与されている。また、国内では文化庁長官表彰、旭日中綬章を受けている。
作曲家としても数多くの作品を書き、1999年には日本・オランダ交流400年の記念委嘱作品、管弦楽曲『パッサカリア』を作曲、ネーデルランド・フィルで初演されると、聴衆から熱狂的な喝采を以て迎えられた。同作品はそれ以降も様々な機会に再演されている。 精力的な音楽活動の他に、各種媒体への寄稿などエッセイの執筆も行っており、その繊細で情感豊かな語り口でマルチな才能を発揮している。既刊の書籍には、『指揮者のひとりごと』(騎虎書房)、『小林研一郎とオーケストラへ行こう』(旬報社)がある。 現在、日本フィルハーモニー交響楽団桂冠名誉指揮者、ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者、読売日本交響楽団特別客演指揮者、九州交響楽団の名誉客演指揮者等を務めるほか、東京文化会館音楽監督、長野県芸術監督団音楽監督、東京藝術大学・東京音楽大学・リスト音楽院名誉教授の要職にある。
(オフィシャルウェブサイト http://www.it-japan.co.jp/kobaken/)
ロシアを代表する指揮者の一人。2008年9月から8年間にわたり日本フィルの首席指揮者を務め、2016年9月に桂冠指揮者兼芸術顧問に就任。首席指揮者就任とともに3年に渡る「プロコフィエフ交響曲全曲演奏プロジェクト」を開始し、1秒たりとも無駄にしない徹底したリハーサルで演奏水準を引き上げ、「ラザレフ効果」と評される。2011年9月より「ラザレフが刻むロシアの魂」をスタート。2013年6月に最終章を迎えた「SeasonⅠラフマニノフ」では、初回から作曲家の人間性にまで深く迫っていく解釈と、妥協なくその解釈を表現させる演奏で会場を熱狂させ、歴史的な作品の評価までをも変える名演となり、センセーショナルなまでの高評価を得た。
続く「SeasonⅡスクリャービン」では、日本人には馴染みの薄いスクリャービンの独特な色彩的•神秘的な世界を分かりやすくダイナミックに提示。2014/2015シーズンからは2年にわたり「SeasonⅢショスタコーヴィチ」を展開。すさまじい音圧と作曲家が憑依したような演奏が話題となった。2016/2017シーズンより「SeasonⅣグラズノフ」が始まる。 モスクワ音楽院でL.ギンズブルグに師事、同音楽院を首席で卒業。1971年にソ連国際指揮者コンクールで第1位、翌年にはベルリンでのカラヤン指揮者コンクールで第1位とゴールド•メダルを受賞。1987年から1995年にかけてボリショイ劇場の首席指揮者兼芸術監督を務める。両タイトルを一人の指揮者が兼任したのは30年ぶり。この間、東京(1989年)、ミラノ•スカラ座(1989年)、エディンバラ音楽祭(1990、91年)、ニューヨーク•メトロポリタン歌劇場(1991年)などの演奏旅行では前例のないプログラムを実行し高い評価を得ている。グリンカ《イワン•スサーニン》、チャイコフスキー《オルレアンの少女》、リムスキー=コルサコフ《ムラーダ》など、同歌劇場における秀作は映像化されている。さらにボリショイ管とは、ラフマニノフ《交響曲第2番》やショスタコーヴィチ《交響曲第8番》などのロシアの交響曲を含む数々の録音をEratoから出しており、大絶賛をあびている。 数多くのCDをリリースしており、ボリショイ管とはエラート、メロディア、ヴァージン•クラシックスで、BBC響、ロンドン•フィル、ロイヤル•スコッティッシュ•ナショナル管等との録音がある。日本フィルとの録音も多く、最近ではオクタヴィア·レコードより『ラフマニノフ:交響曲全集』、ショスタコーヴィチの交響曲『第4番』、『第11番』、『第8番』に続き、『第7番《レニングラード》』が2016年7月に発売されている。
東京生まれ。尾高惇忠にピアノと作曲を師事、音楽、音楽をすることを学ぶ。東京音楽大学指揮科卒業。1984年、26歳で「第1回キリル・コンドラシン国際青年指揮者コンクール」に優勝。以来、フランス国立管、ベルリン放送響、コンセルトヘボウ管、モントリオール響、イスラエル・フィル、ロンドン響、ウィーン響などメジャー・オーケストラへの客演を展開。これまでノールショピング響、リンブルク響、ロイヤル・リヴァプール・フィルのポストを歴任、このうちノールショピング響とは94年に来日公演を実現、さらに米国ではコロンバス響音楽監督を務めヨーヨー・マ、ミドリをはじめ素晴らしいソリストたちとともに数々の名演を残した。
近年では、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響、スイス・イタリア管、モンテカルロ・フィル、バルセロナ響、ビルバオ響、ポーランド国立放送響、スロヴェニア・フィル、サンクトペテルブルク・フィル、チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ、ラトビア国立響、ボルティモア響、シンシナティ響、ヴァンクーヴァー響、サンパウロ響、ニュージーランド響等へ客演。国内では全国各地のオーケストラはもとより、サイトウ・キネン・オーケストラ、水戸室内管弦楽団にもたびたび招かれ絶賛を博している。 オペラ指揮の分野でもシドニー歌劇場デビューにおけるヴェルディ《仮面舞踏会》、《リゴレット》が高く評価されたのを皮切りに、グルック、モーツァルトからプッチーニ、さらにオスバルト・ゴリホフ《アイナダマール》の日本初演まで幅広いレパートリーで数々のプロダクションを成功に導いている。 1991年9月から2000年8月まで日本フィルの正指揮者を務めた。2008年4月より京都市交響楽団常任指揮者を経て2014年4月より常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザー。2015年には同団とともにサントリー音楽賞を受賞。2017年4月からは札幌交響楽団友情客演指揮者も務める。常任指揮者として13シーズン目の2020年4月より京都市交響楽団第13代常任指揮者兼芸術顧問に就任。2020年4月より京都コンサートホール館長も務める。また、東京音楽大学指揮科教授として教育活動にも情熱を注いでいる。