第30回(2022年度)渡邉曉雄音楽基金 音楽賞・特別賞受賞者
◆音楽賞 太田弦(指揮者)
◆特別賞 飯守泰次郎(指揮者)
【略歴】1994年北海道札幌市に生まれる。幼少の頃より、チェロ、ピアノを学ぶ。東京芸術大学音楽学部指揮科を首席で卒業。学内にて安宅賞、同声会賞、若杉弘メモリアル基金賞を受賞。同大学院音楽研究科指揮専攻修士課程を卒業。15年、第17回東京国際音楽コンクール〈指揮〉で2位ならびに聴衆賞を受賞。指揮を尾高忠明、高関健の両氏に師事。これまでに読売日本交響楽団、札幌交響楽団などを指揮。19年4月から22年3月まで大阪交響楽団正指揮者を務める。23年4月から仙台フィルハーモニー管弦楽団指揮者に就任。21年2月、オクタヴィア・レコードより交響曲 第8(9)番 ハ長調 D944 「ザ・グレイト」(新日本フィル公演ライブ収録)をリリース。
【授賞理由】太田弦氏は、1994年札幌生れの28歳、東京藝大卒。2015年に東京国際音楽コンクールで第2位および聴衆賞を受賞、2022年3月までの3年間は大阪響の正指揮者のポストに在任しました。そして2023年4月には仙台フィルの指揮者への就任が、さらに2024年4月には九州交響楽団の首席指揮者への就任が決まっています。太田氏の進境ぶりは目覚ましいものがあります。例えば新日本フィルを指揮した「ザ・グレイト」(2020年)では若々しい気魄の演奏が話題を集め、日本フィルとの「シェエラザード」(2021年)では主題の繰り返しに多彩な変化を持たせるという神経の行き届いた指揮が注目され、東京響とのモーツァルト(同)では全身をぶつけるような情熱的な表現が、また仙台フィルとの「ローマ3部作」(同)では音楽の容をがっちりと保ったまま揺るぎなく頂点を築いて行くという「持って行き方の巧さ」が見事でした。このような太田氏の活躍は、次代の音楽界を担う優秀な指揮者として大きな期待を集めるに相応しいものがあります。よってここに公益信託渡邉曉雄音楽基金「音楽賞」を贈呈いたします。
【略歴】現在、仙台フィル常任指揮者、東京シティ・フィルおよび関西フィルの桂冠名誉指揮者を務める飯守泰次郎は、桐朋学園で学んだ後、ヨーロッパで研鑽を積み、マンハイム市立歌劇場、ハンブルク州立歌劇場などの指揮者を歴任。90年代より国内での活動を再び活発化させ、名古屋フィル、東京シティ・フィル、関西フィル各常任指揮者、新国立劇場オペラ部門芸術監督を歴任。これまでに、2000年度第32回サントリー音楽賞、2004年11月紫綬褒章、2008年第43回大阪市市民表彰、2010年11月旭日小綬賞、2012年度日本芸術院賞、2014年度第56回毎日芸術賞などを受ける。また、2012年度の文化功労者に選ばれ、2014年12月には日本芸術院会員に選ばれた。
【授賞理由】飯守泰次郎氏はこれまで名古屋フィル、東京シティ・フィル、関西フィルの常任指揮者や、新国立劇場オペラ部門芸術監督などを歴任、現在は仙台フィルの常任指揮者に在任中であり、そのほか国内各楽団への客演も数多いことは改めて言うまでもありません。そして、氏の長年にわたる国内における音楽活動の中でも、オペラ――特にワーグナーの舞台作品の上演に於ける業績の大きさは、はかり知れぬものがあります。例えば長大な「ニーベルングの指環」4部作の全曲上演を新国立劇場での舞台上演と東京シティ・フィルのセミ・ステージ形式上演で指揮、また日本人による国内初上演の「ワルキューレ」をはじめ各作品の上演においても数多く指揮を執っておられます。特に大作「パルジファル」を、関西二期会、東京シティ・フィル、東京二期会、新国立劇場の4つもの上演で指揮し大成功を収めるという偉業を成し遂げたのは、国内では飯守氏のみであります。かようにわが国のワーグナー上演史に不滅の業績を重ねつつあることも含め、オーケストラ界における飯守泰次郎氏の多大な功績を讃えるため、ここに公益信託渡邉曉雄音楽基金「特別賞」を贈呈いたします。
渡邉曉雄音楽基金 受賞者一覧第1回 (1993年度) 音楽賞:大野和士 特別賞:延命千之助第2回 (1994年度) 音楽賞:広上淳一 特別賞:村川千秋第3回 (1995年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:小川昂、鈴木清三、田中諄第4回 (1996年度) 音楽賞:高関 健 特別賞:該当者なし第5回 (1997年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:佐治敬三第6回 (1998年度) 音楽賞:金 洪才 特別賞:石丸寛第7回 (1999年度) 音楽賞:沼尻竜典 特別賞:松原千代繁第8回 (2000年度) 音楽賞:大友直人 特別賞:長岡實、江藤俊哉第9回 (2001年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:該当者なし第10回 (2002年度) 音楽賞:下野竜也、藤岡幸夫 特別賞:上原正二第11回 (2003年度) 音楽賞:佐渡 裕 特別賞:渡邊正治、山本直純第12回 (2004年度) 音楽賞:阪 哲朗 特別賞:三善晃第13回 (2005年度) 音楽賞:飯森範親 特別賞:草刈津三第14回 (2006年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:金山茂人、大川内弘第15回 (2007年度) 音楽賞:上岡敏之 特別賞:小野寺昭爾氏、日本フィル九州公演連絡会議(団体)第16回 (2008年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:岩城宏之第17回 (2009年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:ジャン・フルネ、財団法人アフィニス文化財団第18回 (2010年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:若杉弘、日本近代音楽館第19回 (2011年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:小澤征爾 特別支援:仙台フィルハーモニー管弦楽団第20回 (2012年度) 音楽賞:山田和樹 特別賞:中藤泰雄第21回 (2013年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:永田穂第22回 (2014年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:児玉幸治第23回 (2015年度) 音楽賞:川瀬賢太郎 特別賞:ユベール・スダーン、秋山和慶第24回 (2016年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:アレクサンドル・ラザレフ、池辺晋一郎、井上道義第25回 (2017年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:外山雄三、堤剛第26回 (2018年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:エリアフ・インバル第27回 (2019年度) 音楽賞:該当者なし 特別賞:本名徹次、山田正幸第28回 (2020年度) 音楽賞:沖澤のどか 特別賞:豊田泰久第29回 (2021年度) 音楽賞:鈴木優人・原田慶太楼 特別賞:該当者なし第30回 (2022年度) 音楽賞:太田弦 特別賞:飯守泰次郎