注目キーワード

お気に入り公演とは?

チケットの販売状況は日々変化しているため、お早めのご購入をお願いします。

月別

公演ジャンル

会場

指揮者

その他条件

.

お気に入り

ご支援

チケット

English
x Youtube Instagram Facebook LINE

公演カレンダー

公演情報

2026.04.30

広上淳一[フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)] 第781回東京定期演奏会指揮者インタビュー

広上淳一 インタビュー
日本フィルハーモニー交響楽団 第781回東京定期演奏会にむけて

ききて:山野雄大

◆『アラビアン・ナイト』をイメージした、幻想的なヴァイオリン協奏曲!

 ──マエストロは今年1月の東京定期でも、トルコの現代作曲家で人気ピアニスト、ファジル・サイ(1970~)のチェロ協奏曲《Never Give Up》を取り上げられました。〈自由と平和への叫び〉がほとばしるような真摯な作品は、たいへん熱い反響を呼んでおりましたが‥‥ひきつづき今回の定期では、サイのヴァイオリン協奏曲《ハーレムの千一夜》が演奏されます。有名な『アラビアン・ナイト(千一夜物語)』をイメージした作品です。

 これもなかなかの大作で、心に残る音楽です。ソロを弾く服部百音さんが、自分の曲のようにレパートリーとしてあちこちで演奏している作品ですね。彼女からの希望で今回演奏しますが、なにしろ彼女は凄い才能。とにかく休まず走り続けているヴァイオリニストで、心配になるくらい。

 ──服部百音さんは最近でも、この《ハーレムの千一夜》を2023年6月の関西フィル定期、2024年10月の東京フィル定期でも演奏して大評判となっていましたから、日本フィルとの再演も楽しみです。『アラビアン・ナイト』原作の音楽といえば、リムスキー=コルサコフの交響組曲《シェヘラザード》も人気ですが、このサイ作品も、トルコの打楽器をあれこれ駆使しながら、魔法にかけられるようなリズムのなかで、ヴァイオリン独奏も多彩に大活躍‥‥という音楽で、現代曲と思わずに愉しんでいただけるのではないでしょうか。

 そう。そもそも聴衆の皆さんは、なぜ「現代曲はいやだな」という先入観を持つようになってしまったか。山本直純先生なんかは、そのあたりを分かっていらっしゃった。彼は実験的な作品も書けた人なんですが、その前に調性のある曲を書き、劇音楽を書き、〈オーケストラがやって来た〉という番組をやり‥‥。彼や外山雄三先生のような作曲家たちは「まずそこ[実験的な作品]ではないだろう」ということを分かっていらっしゃった。モーツァルトにしたって、「分かりにくい作品すぎても良くない。必ず聴衆の理解が得られるような、ほんのちょっと先をゆく音楽を書く」というようなことを言っていた。そういう姿勢から、現代音楽が逸脱していってしまったのは、〈自己顕示欲〉や〈承認欲求〉だと思う。
 指揮科の学生だった頃、いろんな音楽を聴かなければ‥‥と現代音楽の演奏会に行くと、ステージ上のメンバーよりも聴衆が少ない。みんな凄い顔をして聴いていて‥‥それも現代作品が1曲だけならいいんですけど、再演もされないような作品を何曲も続けて聴いていると、これで心が豊かになるのだろうか、と思いながら会場を後にしたことを思い出します。〈日本フィル・シリーズ〉のように、厳選された作曲家に書いてもらって、再演される機会も多い現代曲が生まれる機会には意義もありますが、やはり実験的な作品ばかりでは、オーケストラの定期会員のお客様には受け容れられにくいでしょう。これは、啓蒙して来なかった我々オーケストラの責任でもあります。
 そんななか、ファジル・サイの作品というのは、本人が優れた演奏家であることもあって、普通の人が聴いても〈なんて良い曲なんだ!〉と思う音楽になっている。これは、迎合して書いているわけではないんです。あくまで自分の心の中に聴こえてくる音楽を表現している。

 ──難しく考えずとも、聴き手のなかに幻想の華が咲き乱れるような曲ですので、お楽しみにしていただければと。

◆〈古き良き〉時代の輝きへ――ガーシュウィン《パリのアメリカ人》

 ──ところで、コンサートのはじまりは、ジョージ・ガーシュウィン(1898~1937)の《パリのアメリカ人》(1928年)。花の都に旅したアメリカ人、という視点から描かれた、ジャズの影響も生き生きと響く愉しい作品ですね。都会の喧噪を表現するために、自動車のクラクションを実際に鳴らしたりと、ウィットに富んだ人気曲です。

 〈古き良きアメリカ〉といいますか、アメリカという国がいちばん輝いていた時代の作品から始めるわけです。ジーン・ケリーが主演した愉しい映画にも使われていますね[ヴィンセント・ミネリ監督『巴里のアメリカ人』1951年公開]。ガーシュウィンは当時、自分の作曲技法が未熟だという自覚を持っていたから、フランスの作曲家ラヴェルに会いに行って、作曲を教わろうとしたんですが、ラヴェルはガーシュウィンの作品の楽譜を見て「君は既に一流の才能があるんだから、僕みたいな二流に習わなくていい」というようなことを言われた。彼の才能を認めたラヴェルも凄いし、ラヴェルにそう言わしめたガーシュウィンも凄い。
 僕は彼の〈ピアノ協奏曲ヘ調〉なんか大好きですが、人種差別の酷いアメリカにあって、全ての登場人物を黒人にしたオペラ《ポーギーとベス》を書いた人ですし、人間として強い平等意識を持った人でもありました。そういう点ではベートーヴェンと同じ。早くに亡くなってしまい、惜しかったですね。

◆〈人間愛〉に溢れた、アメリカならではの傑作──コープランド〈交響曲第3番〉

 ──ガーシュウィンはユダヤ系の移民を両親に持ったニューヨーク生まれのひと、そして次回定期の最後にお聴きいただくアーロン・コープランド(1900~90)も同じくユダヤ系の移民を両親にしたニューヨーク生まれです。

 アメリカって移民の国なんですよね。もともと、ヨーロッパにいられなくなった人たちがやって来て、先住民の土地を奪っていったわけですから。

 ──今回演奏されるのは、コープランドの交響曲第3番(1946年)です。マエストロはこの曲を、1月にも京都市交響楽団で指揮されたばかりです。

 素晴らしかったですよ。これも名曲なんですよね!オーケストラは大変ですけれども(笑)。バーンスタインもコープランドの音楽を非常に尊敬していましたし、私もコープランドではバレエ音楽《アパラチアの春》や《ロデオ》など限られた作品ではありますが、取り上げてきました。彼の音楽は〈人間愛〉だと思う。その理想像を追い求めていたんでしょうね。この交響曲第3番の壮大な終楽章からも〈人間讃歌〉が感じられます。

 ──その終楽章の冒頭には、独立曲としても有名な《市民のためのファンファーレ》が組み込まれているのも、人気の要因ですね。

 これはもともと、第2次世界大戦中に市民を鼓舞するために委嘱されたファンファーレですね。

 ──今回の定期の演目、もちろん音楽だけ愉しんでいただいてもよいのですが、〈それぞれの作品が書かれた時代〉背景との関わりを考えてみると、聴きかたも変わろうかと思います。

 おっしゃる通りです。これは難しいことではありませんし、どう聴かなければいけないということでもありません。皆さんがご自分の生活史なり人生史にも思いを馳せながら、作品が描いてゆく音に耳を傾けていただければ。

 ──第2次世界大戦を挟んだ時代に、作曲のありかたを真摯に考えていたコープランドと、第1次世界大戦のあと恐怖への反動のように〈ローリング・トゥウェンティーズ(狂騒の20年代)〉の文化が華ひらいた時代、〈ジャズ・エイジ〉を背景にしてヒットを飛ばしたガーシュウィン‥‥異なる〈戦後〉を生きていた二人のアメリカ人作曲家、それぞれの背景を重ねるだけで、音楽の陰翳もより深く見えて来るかと思います。

 コープランドの第3楽章なんか、深いですよ! 人間の奥底に流れている、おぞましいものを描くようなところもあって‥‥鬱のなかにもどこか救いの光がある、実にオリジナルな音楽。ここから音楽がとまらずに終楽章の《市民のためのファンファーレ》へ続くわけですから。

 ──その続きかたも深いですね。

 そう。第1楽章でも壮大な音楽の中にアメリカの大陸的なものを感じさせますし、これらはヨーロッパとも違う、アメリカ的な感覚を持った作曲家ならではの音楽です。第2楽章はプロコフィエフのような、というより彼へのオマージュのように感じます。

 ──コープランドがパリに留学した青春時代には、プロコフィエフも気鋭の鬼才でしたから、その影響関係も面白いですね。

2026年06月06日 (土) 14:00(13:10 開場 )
2026年06月07日 (日) 14:00(13:10 開場 )
サントリーホール

指揮:広上淳一[フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)] 
ヴァイオリン:服部百音

ガーシュウィン:《パリのアメリカ人》
ファジル・サイ:ヴァイオリン協奏曲《ハーレムの千一夜》 op.25
コープランド:交響曲第3番

S席 ¥9,500 A席 ¥8,000 B席 ¥7,000 C席 ¥6,000 P席 ¥5,000 Ys席 ¥2,500

  • Facebook
  • x
  • LINE