日本フィルハーモニー交響楽団＋杉並公会堂presents
エデュケーション・フェスティバル2025 春休みオーケストラ探検みる・きく・さわるオーケストラ！イベントレポート
（写真・レポート：山口敦）
１ はじめに（総括）「みる・きく・さわる オーケストラ！」という、このエデュケーション・フェスティバル、コロナ禍の影響から、過去数年、プログラムの内容が縮小されて開催されてきましたが、今年はロビーでのサプライズ演奏や楽器体験、ものづくりのワークショップ、そして新たな企画も登場するなど、久々にフルスペックでさまざまなイベントが繰り広げられ、まさに「観て・聴いて・触れる」オーケストラ体験が戻ってきました。フェスティバル立ち上げ当時からの構想であった「杉並公会堂の全館を1日、音楽のテーマパークにする」というアイデアの復活です。オーケストラという巨大な音楽集団と聴衆とは、通常「舞台」と「客席」という２つの空間で仕切られています。その距離感を縮め、オーケストラ奏者もひとりひとりが生身の人間であり、話を交わせる存在であること。それにオーケストラの楽器に実際に触れ、音を出してみること。なにより多彩な各国のクラシック音楽を知り、自らも演奏に参加できること。こうしたさまざまな出会いと発見を、杉並公会堂のいたるところで体験できる場を作り出したのが、この1日でした。
２ スタッフ体制日本フィルと杉並公会堂の事務局員、楽員に加え、ボランティアスタッフ、荻窪祝祭管弦楽団のメンバー等、総勢90名が運営にあたりました。
３ 各セクションの記録■サプライズライブ１階ハーモニープラザでのサプライズ。今回は「高山組」「日本フィル弦楽合奏部」の２グループがミニライブを開催。演奏者たちを取り囲み、目を見張り、耳を澄ます聴衆の姿がとても印象的です。
【高山組】田村昭博(vn) 大貫聖子(vn)小中澤基道(vla)久保公人(vc)高山智仁(Cb)
【日本フィル弦楽合奏部】竹歳夏鈴(vn)西村優子(vn)本田純一(vn)佐藤俊一郎(vn)中溝とも子(vla)久保公人(vc)
■楽器体験毎回、長蛇の列ができる人気コンテンツが久々再開。今回はヴァイオリンとチェロ。荻窪祝祭管弦楽団のメンバーが優しく楽器体験をサポートしました。
■ふくろう隊長の公会堂探検貨物搬出入用エレベーターに乗って公会堂のバックステージを歩くツアー。公会堂のスタッフがツアーコンダクターを務め、ピアノ庫では名器ベーゼンドルファーのフルコンサートグランドピアノに、また調整室では舞台照明の調整卓を実際に操作するなど、なかなか普通にはできないことを体験しました。
■リレー・ソロコンサート「音楽図鑑」小ホールでは、７名の日本フィルメンバーが交代でリレーコンサート。それぞれの楽器へのこだわりも語りました。このコーナーは、聴きごたえのある楽曲も並び、大人も子どももじっくりと耳を傾けました。
第１奏者：平井幸子(vn) 第２奏者:江原望(vc)第３奏者：松岡裕雅(ob) 第４奏者：犬飼伸紀(tp)第５奏者：伊藤舜(hrn) 第６奏者：伊藤雄太(tb)第７奏者：照沼夢輝(cl)伴奏：多田直子/小林裕子(pf)
■工作ワークショップ「みんなでかさをデコレーション」外光の入る明るいホワイエにテーブルを並べ、小さな傘をつくりました。音楽に耳を傾けるだけでなく、美術工芸の工作に集中する姿もまた印象的です。この傘は、最後のオーケストラコンサートに登場しました。
■オーケストラのメンバーと演奏しよう！地下のスタジオDにて、今回初の試み。抽選に当選した子どもたちが、６人の日本フィルメンバーと一緒に楽曲（最後のオーケストラコンサートでも演奏するルロイ・アンダーソン：シンコペイテッド・クロック）を演奏。ナビゲーターのポンくん（伊波睦）のリードで楽しく合奏したひとときです。
伊波睦(進行役)谷﨑大起(vn)榊渚(vn)児仁井かおり(vla)大澤哲哉(vc)池田健太(perc)
■スタンプラリー、楽員のサイン公会堂の各階のスタンプ置き場でスタンプを集め、スタンプをコンプリートすると記念品がもらえます。また、入場時に手渡されるガイドブック（イベントプログラムの冊子）の最終ページにはサイン欄があり、館内で出会う日本フィルメンバーがサインを。
４ オーケストラコンサート締めくくりに大ホールで日本フィルハーモニー交響楽団のコンサート。オープニングはビゼーの《カルメン》より「闘牛士の行進」で華々しく。そしてヨハン・シュトラウス2世のポルカを2曲。《雷鳴と電光》では、ロビーのワークショップで手作りした傘を振って客席も共演。アンダーソンの《シンコペイテッド・クロック》では巨大な時計も登場しました。中間部ではナレーター石井あみさんの美しい歌声が登場、《星に願いを》そして《森のくまさん》は客席も一緒に。コンサート後半はブラームスの《ハンガリー舞曲第５番》、オッフェンバックの《天国と地獄》で盛り上がります。そして４種類の弦楽器の大きさを比べてみながら、マスカーニの《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲で弦楽合奏の美しさを堪能。最後はエルガーの《威風堂々 第１番》。雄渾な行進曲とトリオの高貴な名旋律をもってコンサートを締めくくりました。アンコールはヨハン・シュトラウス1世の《ラデツキー行進曲》。客席も一緒に手拍子で参加です。
＊公演情報日程：2025年3月29日（土） 会場：杉並公会堂 大ホールほか出演：和田一樹(指揮) 石井あみ(ナレーター)扇谷泰朋（コンサートマスター）日本フィルハーモニー交響楽団（オーケストラ）
主催：公益財団法人日本フィルハーモニー交響楽団／杉並公会堂（株式会社京王設備サービス）協賛：京王電鉄株式会社／株式会社 チャイルド社後援：杉並区／杉並区教育委員会協力：音の台所助成：新たなオーケストラ支援事業┃独立行政法人日本芸術文化振興会
