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平和を願う室内楽コンサート  泉福寺での41年の歩み

2025-06-06
地域

平和を願う室内楽コンサート

泉福寺での41年の歩み

「記憶」を守り続ける場所

2025年4月20日、新小岩駅近くの泉福寺で、第41回「平和を願う室内楽コンサート」が開催されました。これは、第二次世界大戦中の関東大空襲で甚大な被害を受けた江戸川区において、戦争の記憶を未来に伝える場として、真言宗泉福寺と日本フィルが長年協力して続けている特別な取り組みです。

コンサートがうまれた背景

このコンサートが生まれたのは、日本フィルの存続が危ぶまれた時期に遡ります。当時、演奏の機会を失いかけていた楽団を支援しようと、地域の人々が演奏の場を提供したことがきっかけでした。こうした「市民コンサート」は、各地で誕生し、今日のアウトリーチ活動の先駆けにもなりました。

長く続く“祈り”の場

このコンサートは、地域の檀家や近隣に住むリピーターの方々にとって、単なる音楽会ではなく、平和への祈りを新たにする場です。演奏の前には、戦争の悲惨さを語り継ぐ講話が行われ、かつてこの地で多くの命が失われた記憶や、現在も世界中で何の罪もない市民が犠牲になっている現実に対する“祈り”の時間が設けられました。
出演したメンバーは戦争を直接経験してはいませんが、その記憶に思いを馳せ、音楽を通して平和への願いを伝えました。今回のプログラムは、楽員自ら選曲し、クラシックからジャズ、歌謡曲まで幅広いレパートリーが披露されました。

【プログラム】
J.S.バッハ:羊は安らかに草をはみ
マウラー:3つの小品
ブラームス:子守唄
エワルド:金管五重奏曲第3番より第1楽章
ネイゲル:ジャイブ・フォー・ファイブ
三岳章:川の流れのように

【出演】
トランペット:大西敏幸、犬飼伸紀
ホルン:伊藤舜
トロンボーン:伊藤雄太
チューバ(ゲスト):宮西純

音楽がもたらす新たなつながり

コロナ禍を経て人が集う機会が減り、孤立感がいまだ残る今、このコンサートは音楽を通じて人と人とをつなぐ大切な場となっています。
本堂に響く音楽は、集まった人々の心を結び、過去と現在、そして未来へと静かに思いを巡らせる時間を生み出しています。

また、過疎化や都市過密、公害、核家族化、高齢化、治安の悪化、教育の荒廃といった、社会のさまざまな課題に市民が向き合い続けてきたこの場は、人々の思いが交差し地域の絆を育む場としての意義も、年々深まっています。

未来につなぐ“音楽の灯”

泉福寺での「平和を願う室内楽コンサート」は、41年にわたり、戦争の記憶を見つめ平和を祈り、そして人と人をつなぐ場として続けられてきました。
時代が移り変わっても、戦争の記憶が遠ざかっても、音楽を通して“平和を願う心”を次の世代へつないでいくこと――それが、私たちの使命です。