グラズノフ作曲《お嬢様女中》の解説公開!

6/16,17の【ラザレフが刻むロシアの魂 Season IV グラズノフ2】は、《お嬢様女中》を取り上げます。
上演される機会もあまりない作品ですので、演奏会の前に内容をご紹介します!

 

 

グラズノフ:バレエ音楽《お嬢様女中》

 《眠れる森の美女》(1890年初演)などチャイコフスキーの音楽とともにロシア・バレエの栄光を築いた振付家マリウス・プティパ(1818〜1910)は、80歳代になって30歳代の若き天才作曲家アレクサンドル・グラズノフ(1865〜1936)と組んで《ライモンダ》(1898年)を生む。この豪奢な輝き美しい傑作に続いて、世代を越えたコンビはさらに2つのバレエを創ることになる。いずれも1900年にサンクトペテルブルクのエルミタージュ劇場(ネヴァ川に面した冬宮殿の中に建てられた皇帝のための小劇場で、1895〜98年に改修されてから一流のオペラ・バレエ上演が盛んに行われていた)で初演された《お嬢様女中》と《四季》だ。フランス風の洒脱な明るさに満ちた前者と、ロシア音楽の色彩美に溢れた後者と‥‥。いずれも《ライモンダ》とスタイルを変えた小宇宙を見事に創ってみせる才気煥発にも驚かされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ライモンダ》《四季》は既にラザレフ&日本フィルの快演をお聴きいただいているので、本日は《お嬢様女中(恋のたくらみ)》をお楽しみいただこう。副題に〈ワトー風の牧歌〉とあるように、ロココ様式の〈雅なる宴(フェート・ギャラント〉の画家として知られるフランスのアントワーヌ・ワトー(1684〜1721)の絵の世界をイメージしたバレエだ。

 ざっとバレエの流れと音楽をご紹介しよう。

 ホルンと木管のメロディがのびやかな雰囲気をひらく[序奏]に続いて、心浮き立つ雰囲気と共に幕があがると《第1場》は公爵家のお城の庭園。朗らかでいたずら好きの娘イザベラに、公爵夫人は結婚相手として侯爵を連れてくることになっている。[レチタティーフ・ミミック]翳り美しいガヴォットと、装飾音も特徴的なミュゼットを踊るイザベラ。[サラバンド]4組の荘重な踊り。[ファランドール]テンポ良い舞曲から《第2場》へ‥‥旅劇団が[マリオネット人形の踊り]を披露する。

 《第3場》侍女のマリネットがイザベラに、婚約者からの手紙を手渡す。イザベラは公爵夫人に「まだ婚約者を知りもしないし、地位や富を目当てにした結婚ではなく私自身を愛してほしい‥‥」と訴える。未来の夫の真意を知ろうと計略を話すイザベラ。「自分は侍女の衣裳を着て、公爵には代わりに侍女を婚約者として紹介しましょう」

 《第4場》若き美貌の侯爵が登場、すぐ《第5場》へ。侍女の衣裳を着たイザベラは、侯爵に優雅で完璧な応対をみせる。すっかり魅せられた侯爵。[ヴァリアシオン(独舞)]で侍女(に扮したイザベラ)はご主人様を真似て踊り、その優美さに侯爵は惚れ惚れ。

 そこに《第6場(行進曲)》公爵夫人ら貴族たちが登場。婚約者(に扮した侍女)を初めて目にした若き侯爵は、すっかり失望する。

 《第7場(グランド・ワルツ)》偽イザベラと会話をかわす侯爵。彼はますます侍女(に扮したイザベラ)に惹かれてしまう。ワルツを間違える偽イザベラに対して偽侍女(イザベラ)の踊りは美しい。侯爵は婚約破棄を決意。侯爵夫人は彼をお城の中へ招き入れる。

 《第8場》(ここから第11場冒頭までは3分半ほどの短い場面)侯爵は人々から離れて仮面で顔を隠した侍女(これは本物の侍女)に言う。「ここを離れ一緒になりましょう。生涯必ず幸せにします!」

 《第9場》二人は出て行こうとするが、《第10場》公爵夫人や侍女(の衣裳を着たイザベラ)をはじめ人々が仮面舞踏会の扮装で登場。侯爵はそこで、仮面を取ったイザベラを見て仰天。侯爵は侍女を見直して「あり得ない!‥‥しかしやっと計略が分かって幸せだ。私が愛しているのはあなただ!」イザベラは大喜び。ここに幸せあり!《第11場》若い二人を祝う村人たち。[農民たちの群舞]は陽気な舞曲。[婚約者たちのグラン・パ]はヴァイオリンとチェロの独奏が優美に歌う二人の踊りから、堂々たるアレグロへ。[ヴァリアシオン]で再び独奏と共に若い婚約者たちの踊りが披露される。最後は[フリカッセ]で古いフランス舞曲が愉しく鳴りわたり、壮麗なコーダへ。

解説:山野雄大