音楽物語《セロ弾きのゴーシュ》(原作:宮沢賢治)

原作: 宮沢賢治
作曲・編曲: 寺嶋陸也
絵: 雨田光弘
演出: 田窪一世
演奏時間: 2時間(休憩15分含む)全2幕
出演: 「金星音楽団」13名 朗読者 1名 指揮者 1名
楽器編成: <弦楽器>ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
<木管楽器>フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット
<金管楽器>ホルン、トランペット、トロンボーン
<打楽器>ティンパニ ほか
舞台スタッフ: 舞台監督、照明、音響、オーケストラステージ係2
演奏曲:

【第1幕】

印度の虎狩り…オリジナル
愉快な馬車屋…オリジナル
なんとかラプソディ…原曲:ダヴィット・ポッパー作曲《ハンガリアン・ラプソディ》
天国と地獄…原曲:オッフェンバックの《天国と地獄》

【第2幕】

第6交響曲…原曲:ベートーヴェンの交響曲第6番《田園》より(約35分)
使用される16mm作品:無声映画『ドタバタ撮影所』
登場する雨田光弘の絵:25枚

《セロ弾きのゴーシュ》と「金星音楽団」

 

宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』は、「町の活動写真館」でチェロを弾く係であるゴーシュが、動物たちに助けられながら音楽家として成長する物語です。主人公はいうまでもなくゴーシュですが、この物語の陰の主人公ともいうべき「金星音楽団」の存在と役割を軽視しては、この作品を理解することはできません。

トーキー(音声を伴った映画)になるまで映画は「活動写真」と呼ばれた無声映画でした。そのため、現在の映画館にあたる「活動写真館」には無声映画の伴奏を務める専属の音楽隊がいました。ゴーシュはその音楽隊の楽士であり、「金星音楽団」は全員「町の活動写真館」の楽士からなっています。

13名の金星音楽団が演奏するベートーヴェン《田園》

「金星音楽団」のメンバーは何人いるのか原作には書いてありません。しかし活動写真館の専属音楽隊であることから考えると、どんなに多く見積もっても10人程度でしょう。その10人程度の「金星音楽団」が「町の音楽会で第6交響曲=ベートーヴェン《田園》を演奏する」ところに作者の深い意図があると思われます。原作の「第6交響曲」はベートーヴェンの第6交響曲《田園》と考えられています。それは、宮沢賢治がベートーヴェンの交響曲、とりわけ《田園》が大好きだったこと、さらに賢治が『セロ弾きのゴーシュ』を書く上でベートーヴェンの《田園》の曲想と標題からいくつかのヒントを得ていることなどから、間違いないと思われます。

通常は約80人のフル・オーケストラで演奏する《田園》を、わずか13人の「金星音楽団」が演奏するのです。この無謀とも思える設定をした賢治が意図したのは、活動写真館の楽士たちの、プロの音楽家としての誇りとチャレンジ精神だったのではないでしょうか。その芸術家魂があってこそ、物語最後の「町の音楽会」での感動的な演奏につながるのです。
日本フィル・オリジナル作品における朗読と音楽による『セロ弾きのゴーシュ』は、原作に書いてある音楽のすべてを、日本フィルのメンバーによる「金星音楽団」で実際に演奏しようというものですが、そのハイライトが劇中コンサートで演奏される「第6交響曲」です。原作は、「第6交響曲」の演奏が終わった後の聴衆の反応を次のように伝えています。
「ホールでは拍手の音がまだ嵐のように鳴っております。…ホールではまだぱちぱち手が鳴っています。それどころではなくいよいよそれが高くなって何だかこわいような音になりました」